耳と言っても、解剖学的には外から外耳、中耳、内耳と明確に分類されており、各領域で発生する病気も異なります。
外耳
外から見える耳介や耳かきする場所で鼓膜をもって中耳との境界としています。耳介で集めた音が外耳道内で共鳴することで効率よく鼓膜まで振動を伝達します。耳かきで外耳を傷つけることで発生する外耳炎、耳垢が詰まってしまう耳垢塞栓、柔道などスポーツマンに多い耳介血腫、感染してしまうと抗生剤による内服治療や場合により切開排膿しないといけない先天性耳瘻孔などがあります。サーファーズイヤー、外耳道真珠腫、外耳道腫瘍、外耳がんなどもあります。
中耳
鼓膜と内耳の間の領域を言います。正常では、中耳内は空気で満たされ、耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)を介して、鼓膜に入力した振動を効率よく増幅しながら内耳に伝えるという役割があります。中耳の内側は、鼻の中と連続した粘膜で覆われており、風邪を引いた際、炎症が波及して中耳炎を引き起こすことがあります。そうなると、耳小骨や鼓膜の振動が膿汁に邪魔されて聞こえは悪くなります。炎症がひどい場合、通常は隔壁で隔てられている内耳に炎症が波及して、内耳炎を引き起こし、めまいや感音難聴を引き起こしてしまいます。他に、交通事故などの強い衝撃が側頭骨に加わると、耳小骨離断(脱臼)などにより伝音難聴になります。中耳内には、顔面神経から分枝した鼓索神経という味覚を司る神経も通っており手術操作による損傷や、炎症による麻痺、顔面神経麻痺に伴う麻痺で味覚障害を引き起こすことがあります。
内耳
振動を電気信号に変換して脳に信号を送る蝸牛と、三半規管で知られる平衡感覚を司る前庭器官で構成される領域です。蝸牛の病気としては感音難聴がメインとなります。前庭器官の病気としては、良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎などがあります。側頭骨の深部に存在するため直接見ることはできませんが、様々な検査機器を駆使することで間接的に蝸牛や前庭器官の状態を評価することが可能です。