本治療は、元来「Bスポット療法」と呼ばれていたもので、Bとは鼻咽腔(ビインクウ)の「ビ」からとって命名されたと言われております。上咽頭は、鼻の中の突き当りかつ口蓋垂(のどちんこ)の裏側上方に存在する領域をさし、その領域に咽頭扁桃(アデノイド)という上気道の免疫を司る器官が存在しております。
咽頭扁桃は、一般的な扁桃腺として知られる口蓋扁桃、舌根に存在する舌扁桃とともに、ワルダイエル咽頭輪を構成しております。ワルダイエル咽頭輪は、生体防御の最初の砦とされ、上気道から侵入してきたウイルスや細菌等を最初にキャッチし、全身に免疫反応の司令を出す器官です。その部分をEATにより刺激し、同部位の炎症を鎮静化することで様々な症状が改善すると言われております。
治療の対象は「慢性上咽頭炎」となりますが、その「慢性上咽頭炎」が引き起こす様々な症状に対して効果があるとされています。Bスポット療法の発案者である堀口申作先生の名著「堀口申作のBスポット療法」は、医療従事者向けというより一般向けの書籍ですが、堀口先生の情熱が詰め込まれた内容で、それまで懐疑的に考えていた私も、今まで諦めていた症状に対して効果がある可能性があるのであればやるべきと考えるに至りました。その本の中で扱われている疾患としては
風邪、頭痛、顔の痛み、肩こり、めまい、自律神経失調症、リウマチ、喘息
など、局所的なものから全身疾患まで多様です。最近では、「新型コロナウイルス感染症後遺症」に悩む患者さんたちに効果があるとして、内科など耳鼻咽喉科以外の科でも広く行われるようになりました。これは経験的にも効果が見込めると医師たちが肌で感じているからこそと思いますし、これで救われる患者さんが増えることもまた良いことと思います。
方法について簡単に説明します。
- 問診
- 内視鏡による上咽頭の観察(炎症の有無を調べます)
- 炎症がある場合、EATの希望があればリスクや処置後の痛みについてなど説明をします。
- 鼻の中からスプレーで表面麻酔をします。
- 1%塩化亜鉛溶液を含ませた綿棒で、左右の鼻腔から上咽頭を擦過します。(インフルエンザやコロナの検査のようなイメージです)
- 炎症が幅広い方は口腔内からも大きな綿棒で上咽頭を擦過します。
処置後の痛みがひどかったり、出血が多い場合もありますが、多くの場合は自然に消退します。堀口先生の著書によれば、痛みや出血が多い場合はそれだけ炎症がひどいということである、とされています。何度か繰り返し、経過中適宜内視鏡による上咽頭の観察を実施し、症状が改善した場合は終了します。ただし、症状が変わらない場合は漫然と実施することはしません。
インターネット上では、様々な先生方が分かりやすい説明をされております。適宜参考にされてください。
当院では、EATを希望する患者さんに対しては、必要性を吟味したうえで実施します。お気軽にご相談ください。