のどは漢字で「喉」や「咽喉」などと表記しますが、まさに耳鼻咽喉科の「咽喉」の領域になります。舌、頬粘膜、口唇、上咽頭、中咽頭、下咽頭、喉頭(声門上、声帯、声門下)などの領域に分かれています。しかし、すべて隣り合っている上に同じ一続きの粘膜を共有し、同じ空間に存在するため領域にこだわらずに全体をしっかり診ることが重要です。

良性の腫瘍などは、存在する部位によって「舌癌」「中咽頭癌」「上咽頭癌」「下咽頭癌」「喉頭癌」「中咽頭腫瘍」と名前が付きます。ほとんどの癌は粘膜にできる扁平上皮癌なので、肉眼あるいは内視鏡下に慎重に観察する必要があります。場合によっては口に手を入れて触診することもあります。

炎症性の疾患ではどうでしょうか。「急性咽頭炎」「急性咽喉頭炎」「急性喉頭炎」「急性喉頭蓋炎」「上咽頭炎」「急性扁桃炎」「扁桃周囲膿瘍」などの病名がありますが、原因は様々です。コロナウイルスやエコーウイルス、インフルエンザウイルスなど感冒症状を呈するウイルス疾患から溶連菌を中心とする細菌感染まで様々です。当院では必要に応じて各種検査を実施して治療薬があるものが判明すれは適切な処方を提案します。治療薬がないものに対しては対症療法が中心となります。緊急を要する疾患の場合は、速やかに近傍の高次病院を紹介させていただきます。

自分で緊急を要するかどうかを鑑別する方法としては、「唾液を飲み込めない」「息苦しい」などの症状があればすぐに救急病院に行くことをお勧めします。咽喉の炎症性疾患は急激に悪化することが多々あり、適切な治療を適切なタイミングで実施しないと大変なことになります。判断に困るときはのどのスペシャリストである耳鼻咽喉科を受診してください。

のどの病気でより専門性の高い領域としては「嚥下障害」があります。嚥下とは、ものを飲み込む一連の過程をいいますが、とても精密な動きをします。嚥下過程のどこか一か所に障害があると全体に影響を及ぼします。嚥下の過程は、①先行期②準備期③口腔期④咽頭期⑤食道期の5段階に分かれており、それぞれ様々な関連する筋肉の一連の動きによって制御されています。筋肉を動かすには神経による指令が必要ですから、脳梗塞等の中枢障害でも嚥下障害は容易に起こります。

最も難しい嚥下は、「水やお茶」などのサラッとしたものです。なぜなら、短時間で食道にまで達するためより精密でスピーディな制御が必要だからです。よって、逆に水やお茶がスムーズに飲める場合は、嚥下障害がないかあっても軽度ということになります。最近水を飲むときにむせやすいなどの症状がある際は、内視鏡による嚥下検査も可能ですのでご相談ください。